第十六回:シニア ソムリエ試験
花粉が飛び初めた3月のある日、いきつけのワインバーVのK氏が
「粟ちゃんは受けないの?」
エスプレッソをすすっていた僕は
「はっ?何をですか?」
「シニアの試験だよ。今年から4月になったんだよ。案内来てない?」
「んー・・・。何か来ていたような・・・。」
「相変らずだなー。シニア取れば協会の試験官とかも出来るしさ。
これからはソムリエってだけじゃだめだよ。2年に一回だし受けた方がいいんじゃない?」
「んー。そんなもんですかね・・・?」
Vを後にした僕は
「ソムリエってだけでも、シニアってだけでもだめだと思うが自分の実力を試す意味でも受けてみて損はないな。受けてみるか。」
と軽い気持ちで受験を決意したのであった。
まだ、この時点で千鳥足の酔っ払いは先にある地獄を知る由もなかった。
シニア ソムリエ
直訳すると、「オッサンきき葡萄酒師」である。
受験資格はソムリエ資格後3年以上、職務10年以上。2004年の時点で全国に839人、ソムリエ9514人の約10分の1である。
試験内容は全世界のワインにまつわる法律や格付けや、ワインの歴史、醸造用語、ブランデーやリキュールの知識などなどのソムリエ試験以上に意地悪な筆記試験。
ブラインド テイスティング4種。だいたい白1種、赤2種、リキュール、ブランデーか酒精強化ワイン(ポート、シェリーなど)1種のブドウ品種、ワイン名、ヴィンテージ。色合い、香り、味わいのなどの表現である。
まず、僕の顔を青くしたのは4月のスケジュールであった。
去年のAwatalia設立以来、以来された仕事はほとんどやらせてもらっていたが4月はぎっしり詰っているではないか。
それといざ試験勉強を始めると最初のうちは「へぇー」とか「そうそう。そうだった。」とか余裕があったが試験日と4月のスケジュールとテキストの広辞苑並の分厚さのおかげでみるみる顔が白くなって、頭から煙が出てきそうになってきた。数日前まで夜の12時には決まって千鳥足の酔っ払いだった僕はようやく事の重大さに気付いた。
‘オッサンきき葡萄酒師‘への道は思いのほか険しいのであった。
次号へ続く。。。。。 |