第十七回:シニア ソムリエ試験2
日頃お世話になっている人達に頭を下げ、何とか数日間の休みを貰った僕は遅まきながら試験勉強の突貫体制に入った。
こういう時はいつも近所の図書館を利用する事にしている。
なぜ図書館かというと、僕の家の中は誘惑が多すぎるのだ。
僕が部屋にいる時は大好きなヨーロッパのサッカーを見ていることが多いのだが去年にケーブルTVが見られるようになった事もあって、まずこの誘惑に勝たないと明日はないのだ。
何とか短期間で合格出来る方法を考えてみるがコツコツやるしかないのだ。
いざ勉強を始めると、普段自分がいかに脳みそを使っていないで生きているのか思い知らされた。
10覚えたら5分後には6か7忘れると言う感じで、30代の半ばを向かえた僕の脳みそは腐りかけていた。水前寺清子の1歩進んで2歩下がる(古い!)じゃないが、こんなに効率の悪い記憶能力ではとても試験まで間に合わないのだ。
ちなみに僕を苦しめる試験内容はボルドーのメドックの格付けを覚える「シャトー何チャラカンチャラ地獄」(業界ではこう呼ぶ)に始まり、ブルゴーニュの生産地域と一級畑覚えなさい地獄、ローヌのブドウ品種地獄、イタリアのワイン法地獄、ドイツの難しくて長いワインの名前覚えなさい地獄といった数々の地獄が待ち受けているのだった。
そんな地獄から何とか抜け出そうと、もがいている僕の携帯がなった。
このサイトのプログラマーT氏からである。
「どーも、今初台にいるんですけど、前粟田さんがおいしいって言っていたイタリアンなんていう店でしたっけ?」
「えーっと。んー。ちょっと待って。今、試験勉強中で普段使わない脳みそ使っていたから思い出せない・・・・。」
「すいません勉強中。いいですよ。」
「ちょっと待って。今思い出すから・・・・・・。んー・・・・・・。」
「いや本当にいいですって。」
「んー・・・・・。気分悪くなってきた・・・・。」
もうここまで来ると末期である、大好きなおいしい店の名前すら思い出せないのであった。
しかも、試験1日前に咳が止まらなくなり寝込んでしまったのであった。
風邪だけは10年に一回ぐらいしかひかない僕にとって屈辱である。
きっといきなり勉強したので体がびっくりしてしまったのであろう。
こうして最悪のコンディションで試験当日を向かえるのであった。
ノーアウト満塁でいきなりリーリーフに出てきたピッチャー並にピンチ、ピンチ、大ピンチである。
次号へ続く。
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