第四回:ドルチェット
この品種、ピエモンテの人たちは水みたいに飲む。僕が働いていたラモッラの店のまかないに毎日出ていて、ピエモンテの名物料理カルネ クルーダ(仔牛生肉のタルタル)、ラヴィオリーニ(小さいラヴィオリ)のセージバターソースなどとめっぽう相性がよかった。
黒いベリーの甘い香りが特長で軽快な早飲みタイプが主流である。近年、バリックの効いた果実の凝縮したタイプもあり、一躍脚光を浴びた。 東京で働いていた頃、僕もある造り手のコストパフォーマンスの良い、果実味の濃いものが気に入って2,3ケースまとめ買いをした。
御客様からの評判もよく、「これは良いワインを見つけた。」と思ったものであった。しかし、2ケース目ぐらいからいきなりワインが閉じてしまい、いままでの甘いダークチェリーの香りやフルーティなテイストがなくなってしまいただ、渋いだけの料理酒になってしまった。
輸送でやられてしまったのか、輸入元の管理が悪かったのか定かではないが、コルクの状態もよかっただけに今だに謎である。
ネッビオーロのワインに多いのだが、瓶詰めして案外すぐ飲めるのだが、ある時突然、閉じてしまいそれからゆっくり熟成するパターンは経験してきた。
僕はこれを「ワインの反抗期」と呼んでいて、サーヴィスする時には事の他気を使っている。 この一件があってから、僕はドルチェット恐怖症になってしまい、このタイプのドルチェットを買うのを一切やめた。 それから、ピエモンテで働くようになってから、色々な生産者と話しをした。 「ドルチェットはステンレスタンクでサラっと熟成させた方がこの品種の持ち味が生きる」「ドルチェットにバリックは合わない。」という意見を聞いた。 確かに僕の好みもステンレスタンクで熟成させたものに好きなものが多い。
ただ、新しいタイプもペッケニーノ、カヴィオラのような優れた造り手もいるので否定する気はない。
個人的なおすすめは、クイント キオネッティ、ジラルディ、ジジロッソ、アラリオ、ポデリ エイナウディ。
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